2009年1月5日
『地下鉄一号線』仙女役の女優さんと中野真那さん(右)。中野さんは『美女と野獣』、『嵐の中の子供たち』、『ライオンキング』『ハウトゥ・サクシード』『赤毛のアン』などへの出演歴がある
休演直前の「地下鉄1号線4000回記念公演」のポスターの前で。同作品はソル・ギョング、チョ・スンウ、ファン・ジョンミンなど有名俳優を多く輩出した作品。半年サイクルで俳優が入れ替わるので、筆者は年に2〜3回は観劇して、味わいの違いを楽しんでいた。新バージョンで主人公の仙女は「脱北者」という設定になるのでは? と私は予想しているが、はたして…
年に2回は観劇していたお気に入りのミュージカル『地下鉄一号線』が、12年間のロングランの末、先月末に休演となりました。この作品で描かれたソウルの地下鉄1号線「清涼里駅」の私娼街に巣食う“わけあり”な人々のドラマは、現実のソウルではなかなか見えにくくなっているものです。そんなドラマの気配を求めて韓国の地方を旅している私に、このミュージカルは大きな“代理満足”を与えてくれる存在でした。
休演が近い12月の週末、私はあることを期待しながら、日本からの語学留学生・中野真那(まな)さんを誘って最後の観劇にやってきました。中野さんは劇団四季に所属していたこともあるミュージカル俳優で、昨年9月から韓国に住んでいます。「人と人の関係がとても濃い韓国は温かくて居心地がいい」という彼女の目に『地下鉄一号線』はとても魅力的に映ったようです。
「地べたに座って野菜を商うおばあちゃん、地下鉄車内でテレビショッピングのように物を売るおじさん、ソウルを横断する漢江の南側と北側の格差など、ソウルに来た日本人が目を奪われ、気になってしかたがなくなる部分がたくさん盛り込まれていて、とても引きつけられました」(中野さん)
12月31日までの42日間は休演記念公演に当たり、過去に出演した俳優たちが復帰していたため、通常のメンバーが半年間演じ続けるものと比べると歌や踊りに多少粗さが目立ちましたが、映画『マラソン』の主人公のお父さん役が印象的な俳優アン・ネサン、映画『ビデオを見る男』に主演したチャン・ヒョンソンなどの有名俳優が出ていたため、客席の盛り上がりはいつも以上でした。
休演はとても残念ですが、劇団では現在、新バージョンを準備中とのことなので、再開が待ち遠しいですね。観劇後、興奮がまだ冷めない感じの中野さんから、私が期待したとおりの言葉を聞くことができました。
「半年の予定だった留学生活を延長して、『地下鉄一号線』出演を目指してがんばろうと思います。焦らず、でもいつか確実に夢が叶えられるよう本気でがんばってみます。韓国語の壁はありますが、仙女(ソンニョ)の役に挑戦してみたいです。韓国のミュージカルだからとか主役だからというわけでなく、本当に惹かれる役柄でした。私も第一幕の歌い出しの ♪6時9分 ソウル駅♪ に行ってみたくなりました」
韓国の俳優が日本の劇団四季や東宝の日本語ミュージカルに参加している例は珍しくありませんが、その逆の例は聞いたことがありません。劇団に問い合わせたところ、過去に外国人がオーディションを受けたことはないが、外国人だからといって受験できないということはないそうです。新バージョンの準備中なので、しばらくオーディションはありませんが再開後、日本人の起用が実現すれば、日韓文化交流がさらに大きく前進することになりますね。中野さんの挑戦に注目していきたいと思います。
1967年生まれ。世宗大学院修士課程修了後、日本に留学。訳書に 『宮廷女官 チャングムの誓いのすべて』、 『家庭で作れる「チャングム」の韓国宮廷料理』、 『コリアン・ダイエット』(光文社)。 著書に『マッコルリの旅』(東洋経済新報社)、『韓国・下町人情紀行』(朝日新聞社)、 『韓国の美味しい町』(光文社)、 『韓国の「昭和」を歩く』(祥伝社)、 『韓国料理用語辞典』(日本経済新聞社)、 『一気にわかる朝鮮半島』(池田書店)など。 鄭銀淑のページ