2008年10月18日
お日様がそそぐベランダは昼寝や読書にぴったりの場所
ベランダとつながるゆとりのリビング。TVではなく、大型プロジェクターがあってミニシアターだ。
窓から目が合うのでオーナーとは顔なじみながら、まだ行った事のない家の前のレストラン
かくして“日焼けマシーン”は遊戯具となってしまった。
オランダの田園都市ワーゲニンゲンは人口3万6千人と小粒ながら“フードバレー”といって、食に関する研究所や企業の集積地であるうえ国内唯一の農業系大学や、船舶・海洋研究所、欧州最大手の気象コンサル会社などもあるアカデミックな町だ。学生数5千人、在住者の国籍登録数は160カ国、類まれなる国際タウンでもある。
だがここで住む場所を確保するのはなかなか至難の業で、住宅難のオランダでもとりわけ競争が激しい。昨年、あぶれた学生たちに大学がやっとこさ用意した寮は、送迎バスで片道2時間。ひどい渋滞にまきこまれて学生さん、「へろへろ通学」とあいなった。
そこに企業派遣で日本からやってきたのがMさん一家。ご主人、張り切ったものの条件にあったものをみつけるのは厳しい。来たばかりでクチコミ物件がポロリなんておいしい話は夢の夢。提示された物件は、予算をはるかにオーバー、ユーロ高もあってこれは痛い。
「でも妻と子供が到着する前に決断せねば。えーい」と決めたのが今の家。光熱費や電話代(これがまたバカ高)は含まず家賃990ユーロ(約15万円)。オランダならではの「運河清掃費」というものも払わされる。
それでも広々としたリビング、眺めの良いベランダ……、Mさんは一目ぼれだった。立地はスーパーやバス停まで歩いて5分、カフェまで10秒なのに、街並みはしっとり。ビビッときてその場でOKを出した。間取りは1階が玄関とトイレ。2階は食堂付きリビングと台所、ゆとりのベランダ。3階が主寝室とサブ寝室、勉強部屋、風呂トイレ、プラス地下駐車場といった充分なもので築10年。延床面積は114平方メートル。窓を開けると、真正面にレストランのバーがあって、おやじたちと目があってしまうのは照れくさい。でも、家具付き、食器、シーツやタオルなどのリネン類までついていて、まるでホテルだ。
オランダでよくあるのが留守にする間、家財道具ごと部屋を貸す方式。このお宅もそうで、家主さんがアンティル諸島に赴任の間、丸ごと借り上げて住ませてもらう形だ。日本人の感覚なら「シーツまで貸しちゃうの?」と思うが、こちらでは気にしない。「家にあるものなら、なんでも使っていいよ」のひとつが、奥の部屋で鎮座していた“日焼けマシーン”だった。
私は「セレブ感あふれますねー」と言ったが、ご本人は「即刻……地下倉庫行き!」と思ったそうだ。でも倉庫にはスペースがなくて、今も部屋を占拠中である。
アムステルダムのような大都市ならともかく、地方都市の庶民からすると「お高い物件」。でもこの国では貴重な“日射し”も備え付け、立地条件のおかげで時間もたっぷり節約できる……とバランスは充分にとれているように思う。