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鍵くらいは自分でつけよう、フランス生活

2008年10月1日

  • 筆者 フランス・小笠原めい 笑える話、困った話

写真鍵が三つは都市部では標準。写真建物の入り口、何度も錠前を付け替えた跡がうかがえる。写真暗証番号タイプの建物の入り口、暗証番号は数カ月に一度変わることもあり、長期バカンスから戻って家に入れない!なんてパターンも。写真パリジャンの鍵の束は半端ではない。家の鍵だけでも五つ、さらには仕事先、恋人宅……。

 ある日の出来事だった。アパートに戻ると鍵が開かない。正確に言うと鍵が回らないのだ。最初は腕に買い物袋をぶら下げたまま片手で試していたが、次第に真剣に。買い物袋を地べたに置き、扉やドアノブを両手で押したり引いたりしながら奮闘すること小一時間。パリ暮らしをスタートさせたばかりの私に、泣きつける相談相手は居なかった。

 頭をよぎったのが、郵便受けの所に山ほど置いてあるちらし広告「SOS鍵屋、鍵の問題をエマージェンシー解決!」。近くの公衆電話からヘタクソなフランス語で状況を伝える。「すぐ行きます!」と言った鍵屋さん、現れたのは3時間後だった。階段に座って今晩はどこで眠ろうと途方に暮れていた私は「遅かったじゃない! エマージェンシーって何よ!」と不満をもらした。彼は涼しい顔をして「忙しいんだよ、おれは」。来てやっただけでもありがたく思えということか。まあ、よい。今晩の宿無し事態は彼のおかげで逃れられるのだ。彼の右手に光る赤い工具箱に期待のまなざしを向けた。どんな華麗なテクニックでこの鍵を開けてくれるのだろう?

 工具箱から彼がとりだしたものは、30センチほどのバールと金づち。そしていきなり鍵そのものをガンガンと破壊し始めた。10分後には扉は開いた。

「はい、1000フラン(約2万円)。鍵の取り付け? エマージェンシーだから開けるのしかやらないよ。取り付けはココに電話して」

 ギィーっとだらしなく開いたままで2度と閉まらない扉の前に、あっけにとられる私を残して去っていった。

「壊すだけなら私にだって出来たわい」

 困ったのはその後である。錠前そのものを壊して外したので、当然だが鍵がかからない。パリが比較的安全な都市とはいえ、その夜は心細くてドアの内側にスーツケースを気休めに置いて過ごした。翌日は鍵の取り付けの手配に奔走。壊れた(壊された?)錠前を片手に近所の鍵屋を回り、見積もりをしてもらった。店による値段の極端な差に驚きつつも、一番安いお店に修理を頼んだ。

「鍵がかからないのは困るよね、マドモワゼル。特別に急いであげよう、5日後で良いかな?」

 え? 5日間、鍵なしですか? よほど情けない顔をしたのだろう、彼は2日後に来てくれた。

 この「困った話」を数年後にフランス人に語ると「鍵なんて自分でつけりゃいいじゃん」というのがおおかたの意見。ごもっとも。高いお金を払って、なかなか来ない職人を待つほうがずっとストレスフルなのだ。

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