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〈2〉渋滞防ぎ排出削減

2008年3月25日

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写真「コンジェスチョン・チャージ」のかかる区域を示す標識=ロンドン市内で、神田写す

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 都市への人口と産業の集中は、自動車の集中を引き起こす。日本での二酸化炭素(CO2)排出量の2割近くは車からが占め、都市部での道路渋滞がさらに拍車をかける。都市交通を「低炭素型」に導く対策が急がれる。道路建設で交通をスムーズにする手法には依存しない取り組みも始まっている。

○ロンドン 中心部乗り入れに課金

 ロンドン中心部。赤地に白い「C」の文字が目立つ標識をあちこちで見かける。「コンジェスチョン・チャージ」(渋滞課金)の区域に入ることを示す看板だ。

 38平方キロメートルの区域内には、金融街シティーや官庁街のほか、高級住宅地もある。

 平日の午前7時から午後6時まで、区域を走った車は原則1日8ポンド(約1700円)を払わねばならない。支払いはインターネットや売店で手続きし、翌日までに支払わなければ罰金となる。

 区域につながる277カ所の道路には、車のナンバーを読み取るカメラと標識が設置され、カメラをつけた車も区域を回りチェックする。タクシーやハイブリッド車は全額免除、区域内の住民は9割が減額される。「渋滞を解消し、CO2を減らすのが重要。自動車から公共交通、自転車に転換させたい」とロンドン交通局渋滞課金ディレクターのグレアム・クレイグさんは言う。

 車の渋滞は、大都市共通の悩みだ。世界中で自動車の数は70年には2億5千万台だったのが、05年末には約9億台に増えた。それにつれて各地で渋滞は深刻化している。

 日本では混雑時の車の平均速度(05年度)は全国平均で35.3キロ。しかし東京23区は18.8キロ、大阪市は19.0キロ、名古屋市は21.7キロにとどまる。

 ロンドンでは90年代末から00年にかけては16キロ程度で「馬車と同じ」と表現されるほどだった。

 その抜本的な対策が課金制度だった。公約に掲げて当選した市長が03年に導入した。1年で区域に入る車は18%減り、渋滞は30%減った。

 年間1億2300万ポンド(約260億円)の課金収入は、公共交通機関の充実にあてる。特に路線バスは路線数や台数が飛躍的に増え、最近1年間の乗客数は導入前より45%増えた。

 課金が免除される環境配慮型の車への買い替えも促した。英国トヨタによると、トヨタ車でプリウスが売れる割合は昨年、英国では欧州全体の2.3倍に達した。

 ただ、批判もある。ロンドン商工会議所の調査では、区域内の小売店の50%以上が悪影響を受けたという。コリン・スタンブリッジ会頭は「トースターより大きな物を買うときは、郊外の店に車で行ってしまう」。

 金融街で働くジュリー・レイボウルトさん(40)は「導入当初は車は減ったが、その後また増えた」と感じる。「通勤時間帯の地下鉄は混雑で乗れないときもある。8ポンド払っても車の方が快適と思う人がいるのだろう」

 今年10月からは、走行1キロあたりのCO2排出量が226グラム以上の車は、区域内に入るのに1日25ポンド(約5300円)を課すよう変更する。四輪駆動車やスポーツカーの多くが当てはまり、区域内の住民の車でも9割減額が適用されない。ドイツのポルシェは反発し、法的措置をとる考えを明らかにしている。

○東京 環状道路整備を最優先

 昨年末、東京の首都高速中央環状線で未完成区間の一部(6.7キロ)が開通し、都心を通らずに中央道方面と埼玉方面を往来できるようになった。

 首都高速道路会社によると、東京と千葉の首都高速では平日の渋滞が激しい時間に渋滞の長さを平均22%削減。並行する一般道の交通量も1日平均約千台減ったという。

 日本の交通政策で渋滞解消の切り札は、道路のネットワークをつなぐこととされる。特に、都市の中心部を通過する車を迂回(うかい)させる環状道路が重視される。東京では、内側から中央環状線、東京外郭環状道路(外環道)、首都圏中央連絡自動車道(圏央道)という三つの環状高速道路(3環状)の建設が進む。

 東京都は、16年までに3環状の整備率を35%から90%に引き上げると同時に一般の幹線道路の建設で渋滞を減らす構想を描く。23区の混雑時の平均時速18.8キロを25キロにし、CO2排出を年間200万〜300万トン減らす効果があると見込む。

 だが、3環状全体で9割の開通が見込まれている15年段階でも、都心から半径約15キロをつなぎ、回り道の役割が大きいとされる外環道の完成率は5割未満にとどまる。

 東洋大の太田勝敏教授(都市交通計画)は環状道路の効果を評価しつつ「その内側の交通を抑える施策も同時に進める必要がある」と指摘する。

 だが一般道も、62年前に都市計画決定された幹線道路さえ建設中だ。都内全体の一般道建設に、都は16年までの10年間で3.3兆円の事業費を試算、道路特定財源の必要性を強調している。

 ロンドンが強い対策を打ち出した背景には、歴史的な町並みが残り解体が規制されている建物も多く、建物を壊して新たに道路を造る発想がないことがあるという。唯一の環状高速道路は郊外に1本あるだけだ。

 東京でもロンドンと同様の「ロードプライシング」が検討されている。専門家の委員会が01年に報告書をまとめ、対象区域などの案を示したが、「回り道できる環状道路が完成していない」などとして進展していない。

○鉄道・貸し自転車…交通全体で対策を

 渋滞対策には、「大きな成果を上げるまでに至っていない」(国交省)ものの、交差点付近の駐停車禁止の強化やエコドライブなどもある=表。

 海外では、自転車を公共交通の一部としてとらえる動きが出てきている。パリ市は07年7月、レンタル自転車を導入。市内全域に約1500カ所の乗り場を設けて計2万台の自転車を並べ、1ユーロを払えば1回30分以内なら1日何度でも借り、好きな場所で乗り捨てられる仕組みを始めた。ロンドン市も、10年に6千台のレンタル自転車を始める構想を発表した。

 東工大の屋井鉄雄教授(交通計画)は「環状道路は必要だが、整備が遅れている間に他にできることもしなければならない。道路や公共交通、自転車利用について縦割りではなく、交通政策全体で戦略を立てられる制度を作るべきだ」と話す。(神田明美)

【渋滞緩和策の例】

 ・鉄道や地下鉄の乗車カードを統一するなど利用しやすくする

 ・自動車を駅に駐車して乗り換える「パークアンドライド」を整備

 ・自転車道網と駐輪場を整え、自転車利用を促す

 ・同じ地区の複数の百貨店などの共同配送を進める

 ・社有車の自宅持ち帰りを自粛する

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